会計/バックオフィス系パッケージでオービックの決算が最強な件 ~ freee、マネーフォワードの売上/ARR・決算・財務状況も解説

 会計をはじめとするバックオフィス領域のパッケージというと、グローバル系ではSAPやオラクル、国内系ではNTTデータ、富士通・NECなどの国産ハードウェアベンダー系、オービック、そして最近ではクラウドネイティブに特化したSaaSベンダーのfreee、マネーフォワードなどが出てきています。

 その中でも、オービックの事業状況/決算が最強な件を解説していきたいと思います。合わせて、クラウドネイティブをキーに追いかけるfreee、マネーフォワードについても財務状況を解説していきたいと思います。

 ちなみに、私はfreee会計のユーザですが、クラウドネイティブの会計SaaSは本当に便利で、零細企業にはすでに手放せなくなっています。Freeeは2024年7月から実質的に大幅な値上げを行いますが、それでも私は使い続けると思います。

【オービック 売上高、営業利益の推移】


(オービック 2023年3月期末 決算説明会資料8ページより抜粋)

 この30年間、売上高(約6倍)、営業利益(100倍以上!)、営業利益率(約20倍)の向上を続け、事業の成長、企業価値の向上を続けています。本当に素晴らしい!の一言です。
株価は、2000年のITバブルで跳ね上がった後に急落し、2000年代は株価2,000円以下で推移していましたが、そこから比べると現在は10倍以上の株価を形成しています。現在の時価総額はなんと2兆円!

 オービックのシステムは、システム導入トラブルも界隈では聞かないですし、とにかく堅実にリスクを冒さず事業を拡大してきたものと思われます。財務体質についても無借金ですし、M&Aなどの手法もとらずに自前製品をひたすら磨き続ける、とにかく堅実、という戦略を愚直に積み上げているものと思われます。

 家族主義(新卒主義)という人材採用・育成のポリシーもあるようで(オービックの統合報告書など参照、こちらの記事https://bizhint.jp/report/448494にも解説あり)、今となってはかなり古い体質を感じるものの、これだけ事業が成長していれば文句のつけようもないでしょう。私見ですが、オービックに入社された方はここでキャリアを研ぎ澄ませるのが一番のキャリアプランな感じさえ、します。

 2013年からはクラウドでのシステム販売も開始され、順次クラウドの売上比率が高まっているとのこと。後述するfreeeやマネーフォワードについても、オービックは強力なライバルとして君臨し続けるのだろうと思われます。

 オービックの弱点、死角はと言うと、今後フィンテックはさらに進み、クラウドネイティブのベンチャーはフィンテックとの連携を最大限に行って利便性を高める取組を行ってサービスの拡販を行うことは容易に想像できます。そこに遅れをとって、少しずつシェアを削られていく可能性、というのが考えられるリスクでしょうか。ここは、油断していると足元をすくわれるかもしれず、中長期ではどうなるかわかりません。

 マネーフォワードの2023年11月期末決算説明資料にあるのですが、会計事務所がクラウド化の必要性を認識し始めており、企業への啓蒙・定着が進むとSMBマーケットのシェアが崩れる可能性があります。クラウドネイティブプレイヤーの勝機は、ここかもしれません。

【freee、マネーフォワードの決算・財務状況について】

 クラウドネイティブでこの領域での事業拡大を狙っているトップ2と言えば、freeeとマネーフォワードになります。
 私は現在freee会計のユーザなのですが、フィンテックを活用したデータ連携や決算を組み上げるまでの伝票起票、クレジットカード情報連携、モバイルSUICAのデータ連携、レシート等の電子帳簿保存法対応(アプリで写真撮影してそのまま取り込め、T番号などの自動認識もかなりの精度でできてしまいます!)など、めちゃめちゃ高機能なのです。これがこの値段で使えるの!?という感動レベルの感想を抱いています。(この便利さは、改めて別ブログで記事にしたいと思います)
 大企業の事実上デファクトパッケージであるSAPのConcurと比べても操作性やデータ連携の利便性など圧勝ですし、コストから比べたときの評価は圧勝なのです!
 しかしながら、既存システムからの乗り換えのハードルや、そもそも狙っているターゲットセグメントが私みたいな零細企業・中小企業だと売上のスケールが限られるのでしょう。例えばfreeeは、
・2022年6月期末92億円
・2023年6月期末42億円
・2024年6月期Q2末13億円
と、規模は少しずつ減っているものの減損が続いている状況で、それもあっての2024年7月からの値上げにつながっていると思われます。SaaSベンダーは値上げで収益を確保するのは王道であり、そのことも必ず約款で謳うようになっています。さすがにこのままではまずいので、利益獲得フェーズに入った、ということでしょうか。

 おそらく、売上のスケールが想定ほど行っていないのでは?広告宣伝費をかなりかけている割にARRが取り切れていない可能性を感じます。サービスは本当にいいのですけどねえ。そもそも日本のSMBマーケットの限界が根本要因だとすると、ここに限らず日本全体としてまあまあヤバい、ということになります。そうあってほしくはないですね。
 オービックに、正面切って戦いを挑んでほしいです。がんばれfreee!

 マネーフォワードは、比較的順調に売上・ARRのスケールと利益創出コントロールを行えているようです。(以下、2023年11月期末決算説明資料5ページより抜粋)

 オービックがSMBマーケットを独占してしまうと市場活性化がなされず、独占するソフトウェアベンダー側に価格コントロールを握られてしまうので、freeeとマネーフォワードには今後もぜひ頑張ってもらいたいと思います。応援しています。

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